Conference レビュー

9月5日(水)
【メインコンファレンス】
第一部 Adobe Acrobat5.0日本語版の新機能紹介(一般企業編)

モデレ−ター:グローバルデザイン株式会社 白旗保則(PDF Conference実行委員)
スピーカー1:アドビシステムズ株式会社 岡本明彦 氏
スピーカー2:株式会社クセロ 森真一 氏


Adobe Acrobat 5.0(以下,Acrobat 5.0)を一般企業で効果的に活用するためのレクチャーが行われた。まず岡本氏より,Acrobatの歴史と,Acrobat 5.0に新たに加わった機能が紹介された。次にクセロ社の森氏からは,Acrobat 5.0のバンドルプラグイン「Search PDF Lite」ほか,Acrobat 5.0に対応可能な製品の紹介,最後に再び岡本氏より,Acrobat 5.0の実務レベルでの応用方法や関連製品について補足が加えられた。

■Acrobat 5.0日本語版の機能(岡本氏)

●Acrobatの歴史とPDF運用の動き
1993年に,Acrobat 1.0英語版が発売された。開発の主目的は,“クロスプラットフォームでドキュメントを共有したい”というニーズを満たすためである。1997年には待望のAcrobat 3.0日本語版を発売。同時に実現したAcrobat Readerの無償配布などによって,日本でもAcrobatが広く普及した。
1999年に発売されたAcrobat 4.0では,電子認証,フォーム,注釈機能などの機能が加わった。2001年5月に発売した最新バージョン,Acrobat 5.0では,Webブラウザ上からPDFに直接手を加えられるようになり,XML言語にも対応可能になった。

Acrobatによって生成できるPDFは,従来は主にオンデマンド印刷用,あるいはCD-ROMなどのマルチメディアコンテンツとして使われてきた。しかし最近になり,一般企業でもPDFがシステム運用されていくに従い,グループウェア,文書管理システム,ワークフローシステムへの応用が増えつつある。
特に,従来は紙ベースであったトラディショナルドキュメント,またMicrosoft Wordなどで作成された電子文書をすべてPDFで一元管理し,企業内の情報の資産にしたいという動きが起こりつつある。今後,企業がPDFによる電子文書運用を実現するためには,ドキュメントの身元を確認しながらドキュメントをやり取りする電子認証基盤や,PDFドキュメントを介したXMLとの連携が必須課題になるであろう。

●Acrobat 5.0の新機能
3つのユーザーターゲットに有用である新機能について,それぞれ紹介。
  1. 一般企業ユーザー向け
    (1)Microsoft Officeとのオーサリング機能
    Acrobat 5.0はMicrosoft Officeの上にPDFと連携するためのボタンを2つ追加する。1つは現在開いているドキュメントをワンクリックでPDF化,もう1つは変換した後,メールソフトを起動して,生成したPDFを即座に送信。また,PDF生成の際,デフォルト設定のカスタマイズメニューやパスワードセキュリティも付加する。
    ワンクリックで生成したPDFは「タグ付きPDF」となる。タグ付きPDFは,例えばMicrosoft Word文書をRTFファイルに書き出しする場合など,ドキュメントの再利用に便利な形式である。
    (2)オンライン注釈機能
    Acrobat 4.0の注釈機能は,スタンドアロン状態でPDFに注釈(コメント)を付加するものであった。Acrobat 5.0は,Web上のPDFに直接,オンラインで注釈を付加できる。オンライン上に置かれた1つのファイルを,複数のユーザーが各々のWebブラウザで開き,PDFに注釈を加えていくことにより,意見交換がリアルタイムに行える。
    (3)セルフサインセキュリティ機能
    Acrobat 5.0では「セルフサインセキュリティ機能」を新しく搭載した。本機能は,PDFドキュメントごとに,閲覧できる相手を特定できる。
    (4)バッチ処理機能
    複数のPDFに対してまとめて処理を行う。いくつかのバッチ機能は,“バッチシーケンス”としてデフォルト登録されている。ユーザー自身がバッチ処理を組むことも可能である。
    (5)電子署名機能
    ドキュメントに対し,デジタルで確認ができる機能。方法にはAcrobat 5.0単体で署名できるセルフサインと,PKI(電子認証基盤)システムとの連動によって社内での承認ワークフローに最適。また,BtoBあるいはGtoBで使われる大規模な認証には,PKI(電子認証基盤)システムと連動して署名を施せる。Acrobat 5.0で連動できるPKIは現在「エントラスト5.0」,「ベリサイン」があり,将来的には国内ベンダーも対応する予定がある。Acrobat 5.0の署名機能(API)は無償で公開しているので,ユーザーはAcrobatで生成したPDFに対して署名を施すための署名ハンドラーを開発することができる。
    (6)フォーム機能
    Acrobat 5.0では,JavaScriptおよびファイル送信機能が強化された。PDFフォームに入力したデータをXMLで書き出す機能,指定したサーバに電子的に送り出す機能が付加され,さまざまなシステムとAcrobat 5.0間をフォーム設定において連携することが可能となった。ODBCコミュニケーション機能を使えば,ODBC系のデータベースとPDFのフォームデータの直接やり取りも可能。
    (7)XMLサポート機能
    Acrobat 5.0は3つのポイントにおいてサポートしている。
    ・フォーム機能におけるXML書き出し,指定サーバ送出
    送信されるXMLは,スキーマのないウェルフォームドXML方式となる。
    ・XMLメタデータ(書誌情報)
    ドキュメント作成者,作成日/変更日,ファイル名などの書誌情報をXML形式で表現できる。PDFを1つのオブジェクトとして管理し,オブジェクトにした後,例えば,データを取り出したい場合,PDFのXMLメタデータをキーワードにして検索できる。XMLシステム中にPDFが組み込まれたとしても,簡単に検索し,取り出すことが可能である。
    ・Adobe PDFへのXMLデータ埋め込み
    PDFをXMLのコンテナとして利用できる。


  2. 情報システム部門/情報公開責任者向け
    (1)インストーラ
    Acrobat 5.0は,インストール情報をカスタマイズできる。全社的規模で新たに導入する場合,カスタマイズ済みのインストーラを大量導入支援システムにはめ込めば,インストール作業の手間が省ける。また,社内のファイアウォールにアップデータを置いておき,各クライアントが社内アップデータからダウンロードできる環境に設定できる。
    (2)ソフトウェア・デベロッパーズキット
    Adobe社サイトから無償で提供されている「ソフトウェア・デベロッパーズキット」を利用することにより,Acrobatを社内でシステム運用しやすく作り込むことができる。
    (3)セキュリティ機能
    Acrobat 5.0は暗号化アルゴリズム「RC4」を採用。Acrobat 4.0では40bitだったキー長は,128bitキー長まで高められた。PDFの開示/非開示,ドキュメントの印刷やテキスト抽出および変更などについて,アクセス制御を細かく設定できる。
    (4)アクセシビリティ
    Acrobat 5.0は誰でも等しくドキュメントを見られる“アクセシビリティ”を重視。障害を持つ方が,PDFの中の情報にアクセスしやすいように補助する機能が備えられている。 ・文字と背景色を任意に設定できる。Windowsの「ハイコントラスト」機能もサポート。 ・ショートカット操作:マウスを使わず,キーボードだけで操作が行なえる。
    ・テキスト読み上げ:Microsoft社のAPIを利用し,音声読み上げソフト「スクリーンリーダー」と連携。タグ付きPDFを用いれば,より自然にテキスト内容が伝達できる。スクリーンリーダーは現在,国内で2社が開発中。


  3. プロフェッショナルグラフィックユーザー向け
    (1)フォントサポート機能
    OpenType参照フォントとして,また埋め込みフォントとしてもOpenTypeが使える。また,Macintosh版にてTrueTypeフォントの埋め込みが可能に。
    (2)校正支援
    ・オンライン注釈によるWebベースの校正を実現。
    ・色のソフトプルーフ:ICCプロファイルを指定できる。
    (3)Adobe社製品との連携の強化
    ・Adobe社標準のカラーエンジン「ACE」をサポート。
    ・透明オブジェクトのサポート。
    ・オーバープリントの確認をプレビュー画面で行なえる。
    (4)画像の再利用
    ・PDF内の画像を,別のファイルとして書き出せる。
    ・PDFページ全体を画像ファイルとして書き出せる。


■Acrobat 5.0標準バンドルプラグイン全文検索プラグイン「Search PDF Lite」ほかクセロ社製品の紹介(森氏)

●Search PDFについて
1.プラグインでの検索
Search PDF Liteは,フォルダ単位で複数のドキュメントに対して検索できる。ただし,検索対象PDFをすべて開いて検索するため,大量のファイルを検索するには時間がかかる。そこで,専用の検索インデックスを作成し,高速で検索をかけられる「Search PDF Index」もある。
2.Webブラウザでの検索
「Search PDF Web」はSearch PDF Indexと同一のインデックス機能が使える。Webブラウザを使って,目次から,あるいはインデックスから検索することができる。
3.CD-ROM検索
Acrobat ReaderでPDFを検索できるCD-ROM配布コンテンツを提供。

●PDF生成,編集,運用ツールについて
1.PDF編集,加工
紙文書の電子化には,スキャナが不可欠である。その場合,TIFF形式,あるいはPDFのイメージデータとして電子化される。このままでは検索のためのデータを持たないので,OCR処理するか,文書情報のプロパティに検索用のデータをセットするなどの編集が必要。
一般的には,イメージデータからテキストを抽出するという方法が多く使われている。Acrobatのプラグイン製品「PDF OCR」は,イメージデータの文字画像ポジションをある程度保持した上で,画像の背後にテキストデータを貼り込む。
・クセロ社のPDF編集用プラグイン他ラインナップ
「PDF-Binder」:指定フォルダ内の複数のPDFを一括に束ねる
「SetPageNo」:PDFにページ番号をセットする
「SetPDFInfo」:複数のPDFに一括して文書情報をセットする
「SetMask」:PDFの任意の場所にマスクをかける
「SetBookMark」:csvファイルからPDFにしおりをセット,エクスポート
「PDF-Divider」:PDFをしおりやページ単位で分割する
「PDFアシスタントツールズ」:PDF編集プラグインをまとめたもの
2.PDF運用
PDF運用ソフト「ePware」は,Acrobatと連携して運用する。ePwareは,スキャンデータもアプリケーション・データもすべてPDF化する。同時にPDF化する前のオリジナル・ドキュメントも管理するので,常にオリジナル・ドキュメントとの整合性を保ちながらデータの保管ができるのが特徴。ワークパレットウィンドウ上でPDFの再構築も可能で,複数のPDFを直接編集して,新たにPDFを登録することもできる。
ePwareは,いかにシームレスなPDF登録ができるかが開発目標となった。バージョン1.5では,他アプリケーションとの連携を重視しており,監視フォルダという特定の場所に自動登録する機能を備え,例えばDistillerから吐き出されたPDFデータ,あるいはスキャナから取り込まれたイメージデータを溜め込み,自動的に登録するシステムなどを構築することが可能である。

■Acrobat 5.0の応用方法,注目点(岡本氏)

●オンライン注釈
1.オンライン注釈を利用する場合のサーバ設定について
オンライン注釈は,Webサーバに複数の人間がアクセスし,Webブラウザ越しに任意のPDFファイルを開く。個々の注釈は,そのPDFへ直接書き込みするのではなく,あらかじめ設定された注釈専用のサーバに書き込むことになる。
例えば,事業企画書を複数でレビューする場合,PDFをWebブラウザで開き,コメントを入れる。その際「注釈のアップロード」ボタンを使い,Acrobat 5.0が認識するサーバに書き込みを行う。すると任意フォルダのFDFファイル(注釈を外部ファイルとして書き出したファイル)へ保存される。この要領で,複数の注釈ファイルがそれぞれの名前で書き出され,それをAcrobat 5.0が,あたかもWeb上のPDFに書き込んだようにマージする。
書き込みを行う場所は,ブラウザの環境設定ダイアログ内の“オンライン注釈”で書き込むサーバの種類(会場デモではWebダブを利用)を選び,URLを指定する。
2.オンライン注釈を使わず,FDFだけで校正を行う方法
Webダブを使う場合は,サーバの設定,ネットワーク上のクライアントの設定をすべて行わなければならない。Acrobat 5.0とメーラーがあれば,Web上にPDFを置かなくても,同一のPDFをメール配信し,順次注釈を追加していくという校正方法も可能である。
すでに注釈のついたPDFに自分の注釈を加え,依頼者に戻すという作業ならば,“注釈のフィルタ”を使い,不要なコメントを消して自分の注釈だけ書き出せば,返信データも軽くなり,迅速な校正返信ができる。

●フォーム機能の活用とソリューション製品
Acrobat 5.0は,フォームデータをXML形式で書き出し,XMLデータベースシステムのデータとして利用することも可能である。
Adobe社は,Acrobat Readerにフォーム入力,保存,署名機能を追加した「Adobe Acrobat Approval日本語版」のライセンス販売を8月に開始している。これは,申請書など,社内の承認のワークフローとして,また,BtoBでフォームを使い,ドキュメントを利用する場合など,署名によって身元を明らかにしたい時にも利用できる。さらには行政の場面,GtoG,GtoCでの申請業務にも適している。

●タグ付きPDFの生成法について
タグ付きPDFは,元となるテキストの順番やレイアウトを理解しながら生成することになる。そのためには,Distillerが単純にPDF変換する前に,レイアウトされたテキストの順番をある程度解析しなければならない。あるいはオーサリングソフトとの連携で,ドキュメントの組み立てを読まなければいけない。それを行うための仕組みが,PDF Makerである。
PDF Makerは,Microsoft Officeと連動するためのAcrobat 5.0コンポーネント。Microsoft WordをPDF保存する場合などは,PDF Makerが動く。
Acrobat 5.0をインストールすると自動的に,Microsoft Word上に,PDF Makerに対する細かい設定を行うメニューが追加される。Microsoft Wordの,どの情報をPDFに踏襲させるかを選択する“文書タグ”ボタンをチェックすると,テキストの構造を理解しながらポストスクリプトファイルに書き出してDistillerに変換させることができる。
Adobe社も将来的にはタグ付きPDFを生成できる製品を開発していく意向である。

●バッチ処理シーケンスについて
大量のPDFを処理するためのバッチ処理は,Acrobat 5.0のファイルメニュー内の“バッチ処理”,によって,定義済みのバッチを起動することができる。バッチは,“バッチシーケンスの編集”で自由に編集できる。

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