Conference レビュー

7月29日(木)
【セミナー for Enterprize】
海外、異機種間での文書交換と運用
記録担当:山名 一郎

■はじめに
本セッションでは異機種間での文 書交換の事例を東大の岡本氏に、 文書交換可能なPDFの作成の仕方について、主にMacintoshとWindows間での文 書交換をニッセイエブロの大日向氏に、 それぞれ説明していただく。 次にUNIXでのPDFの作成と文書交換につ いて再び岡本氏に、 最後はシャープの福田氏より、海外を中心とした事例の紹介がある。

■PDFと学術論文、オンラインジャーナル

私の専門 は原子力工学である。 そういう人間がなぜPDFなのかというと、非常に多くの英語の技術論文を読む ためだ。 従来の技術論文は基本的には雑誌で、欧米の出版社を中心に数千誌、刊行さ れている。

こうした雑誌の技術論文は最近大変多くPDFが使われており、これによって時 間遅れがなくなり、オンラインで情報を得られるようになった。 有料でだれでも自由に論文をダウンロードできる。

私たちにとってPDFが都合がいいのは、情報検索機能が充実している点、加え て「可視化」というくらいに、私たちの分野はカラー画像や動画像の交換が頻繁で、 それらもPDFが扱えるのが好都合なのだ。
一部HTMLで配信しているところもあるものの、リアルタイム性、動画像、情 報検索の点から、99%くらいの学会はPDFをオンラインで利用している。 とくに欧米の学会は、英語のフォントしかないのでフォントのトラブルがほ とんど起きないのもいい。

■CD-ROMとPDF

世界の学会では多くの国際会議が開かれる。 その時、欧米の学会で は半数以上が論文をPDFとして収めたCD-ROMを配布している。

CD-ROMの場合、先ほど述べたPDFのメリットに加えさらに利点がある。

通常こうした国際会議の論文集は電話帳5冊分くらいの厚さになるのが CD-ROMなら1枚で済んでしまう。 スペースファクターのよさとともに、何より、プレス代は印刷代の半分以下 で済むことだ。

そのとき、非常に重要になるのが異機種間の、機種に依存しない文書の交換 、とくに海外との場合は、日本語フォントが入っていると簡単に表示できない。 一方、国内においても機種依存の日本語フォントがあり、そのあたりが大き な問題である。

■同機種、異機種間での文書交換

●実験の前提
Windowsで作成したドキュメントをPDFにするという一番多いケースで説明す る。 作成ソフトはMicrosoft Word98日本語版。ドキュメントには、文字化けが起 こりやすい文字コードを網羅的に入力した。 DistillerでのPDF作成で、最初はデフォルト(ジョブオプション" CJKScreenOptimized.joboptions")のまま変換する。

●同 一プラットフォームで再現できる文字、再現できない文字
PDFに変換したWordのドキュメントを開くと、欧文「クーリエ」の一部が何も ないかのようになっている。 日本語を見ると、JISコードの機種依存規格外の文字は変換できているものの 、Unicodeは文字化けしている。 つまり、異機種以前に、Windows95とWindows98の間でさえ再現できないとい う現象が起こっているのである。 このファイルはMacintoshでも同様の結果となる。
Windows英語 版とUNIX版(英語版)はAsian Font Packをインストールしないと何も表示されない 。

●異機種間での文字再現
だが、異機種間で文字も文字コードも 再現できる方法があった。 Acrobat4.0で日本語フォントを埋め込むのである。
先ほどの設 定は「フォントを置き換えテーブルの使用」がインストール時のデフォルトになって おり、実はそれだと、もとのフォントのMS明朝がPostScriptに変換される際にリュウ ミンL-KLになってしまうので文字化けが起こる。
それの回避には、Adobe Distiller(ドライバ)のフォント設定画面で「常に TrueTypeフォントを利用」を選び、「送信方式Type42」と設定し、さらに「テーブル の編集」ボタンをクリックし、フォント置き換えテーブルで該当するフォントのプリ ンタフォントを「送信方式Type42」に設定する。
次にAcrobat Distiller(アプリケーション)の「ジョブオプション」をカスタマイズする。 具体的には、Acrobat4.0形式であることを確認し日本語フォントの埋め込み を有効にする。 次にフォント。MS明朝の場合、「すべてのフォントを埋め込む」で保存する 。 そしてこの設定でPDFにすると、先ほど再現できなかった部分が、Macintosh 、Windows英語版、Unicode、UNIXも含めて表示できる。 表示できれば印刷も可能だ。

■UNIX環境における PDF制作の問題点

UNIXのPDF環境は、Acrobat Reader4.0とAsian Font Packがあれば、英語シス テムでもアジアのフォントが表示できる。 ただ残念ながら、現在Distillerはない。 そのためUNIXでのPDF作成 は、WindowsかMacintoshにファイルを転送し、そこでDistillerで実行しなければな らない。
現在のUNIX上には、
1.Asian Font Packでも日本語が表示されるのは本文の部分だけで、しおりや フォームは表示されない。

2.動画像のリンクが若干難しい。

3.日本語ファイ ル名が使えない。

4.大文字と小文字の区別――Windowsでは大文字と小文字を区別しないが、 UNIXは別のファイルとして扱うため大文字・小文字が混在していると、例えば Windowsではリンクが張れているのにUNIXは動かない――

といった問題がある。

科学技術の分野ではLATEXの 利用頻度が高い。 LATEXはテキストベースのテキストフォーマッタで非常に数式の表示に強く、 われわれはたいていLATEXでPDFを作成する。 LATEXはWindows版、Macintosh版もある。

ただ、 UNIXにはDistillerはないので、UNIX上でPostScriptファイルにし、最終段のPDFには MacintoshやWindowsで変換しなければならず、これが大きな問題になっている。
実際の流れは、(1)UNIXのLATEXのファイル→(2)DVI→(3)PostScript→(4) WindowsにFTP→(5)そこでDistiller→(6)UNIXに戻す――となる。

■シャープ(株)情報システム本部のPDFを使ったワールドワイドな情報共有 と交換

●ワールドワイドなマニュアルづくりの問題点の発見と解決策
多くのメーカがそうであるように、私どものの製品マニュアルも、とくに海外マニュ アルについては直訳でわかりづらい、スペルミスが多い、と社内外から指摘されてい た。

それらについての分析と解決法は以下のようにまとめられる。

1.手間のかかる作業は機械化。

2.できるだけイラ ストや文章を流用する。

3.問題は発生源で押さえる。

機械化とはコンピュ ータ処理とグローバルネットワーク、およびデータの標準形式の策定ということであ る。

コンピュータ処理に関しては、拠点ごとにDTPの導入・未導入があり、また導 入していたとしてもPageMakerやQuarkXPressなど、アプリケーションが異なっている ため、いざ標準化しようとしたら各拠点が使い慣れたツールを主張してきた。そこで アプリケーションはともかく、出力標準としてPostScriptを定め、それにともない PostScriptのサブセットであるPDFも了承された。グローバルネットワークはすでに 世界64拠点間で運用していたのでそれを利用している。

●製品のサービスマニュアルの制作とその効果
マニュアルの制 作の制作は、設計変更ありきの中でいかに早く仕上げるかにかかっている。

DTP導入による機械化処理は、スペルチェックや用語チェックの自動化に大き な効果がある。 さらにCADデータの流用もできるようにし、結果、それまでファクスでやりと りしてしていたCAD図面を含む校正が、PDFとネットワークに変わった。

一方、校正作業において一番有効なのが欧米とのやりとりである。 従来は1、2週間を要し、なおかつ朱字が読みにくく誤りが多かった。 そういう問題がPDFでほとんど解消されている。

次 に翻訳とDTPとの関係について。 私たちは欧州にドキュメントセンターを設立した。 日本からネット ワーク経由でDTPデータを送り、現地で翻訳することで経費を大幅に削減した。 以前はすべて版下やフィルムでのやりとりで、運送費もさることながら関税 がかかる。 国によっては一つの包みが7万円もすることがあった。 さらに倉庫 も削減できた。 印刷は一括して大量に刷る方が安いため、余分に刷ってため置きする。 弊社はアメリカ・ドイツ等に大きな倉庫を持っているが、そういった管理費 もPDFにより削減できた。

●まとめ
私たちは、PDFによって非常に大きなメリットを得たが、やはりXMLとの使い 分けが必要だ。 本当のドキュメントの一元化はXMLにせざるを得ないかもしれない。 企画から開発、資材管理、生産、販売、物流までをXMLで一元化するということを検 討中だが、とはいえXMLですべて解決できるわけではない。 PDFは著作権が侵されにくい電子版下として、今後も当社にとって有用であり 、重要なフォーマットである。

■質疑応答

プロポーショナルフォントを使っているのか。 フォントを埋め込む 前と後でのファイルサイズの違いは?

大日向:使用フォントはMS P明朝だ。ファイルサイズは、今回の例は埋め込 む前が131KB。 埋め込み後が473KB。3倍とみるか、あるいはあれだけの文字を埋め込んでた かが300KB増とみるかは各々の判断だ。 今回のサンプルは文字コード表を網羅的に入れているので相対的にデータ増 が多い。 しかし、通常の文書は同じ文字(例えばひらがななど)が繰り返し利用され るため、これほどまでに肥大化する懸念は少ないと考えている。

フォントの著作権について。 Distillerのジョブオプションでフォン トリストが表示できるが、そのフォントは埋め込んでいいのか?

大日向:ライセンスの問題だ。 Acrobat4.0がリリースされる前に、 プロテクトがかかっていないまま流通しているフォントがある。 それが埋め込めるからといって埋め込むと著作権侵害になる可能性がある。 フォントベンダに確認すべきと考える。
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