|
モデレーター: 白旗保則 グローバルデザイン株式会社
スピーカー1: 石原信義 アドビシステムズ株式会社
スピーカー2: 福岡俊弘 週間アスキー 編集長
スピーカー3: 三栖康生 日経BP社
■電子出版のためのアドビのソリューション(石原さん)
●電子書籍ビジネスの躍動
今年の春、米国でスティーブン・キングが小説をWWW上に掲載した。
約60ページの小説であるが、掲載開始から2日間で約50万件のアクセスがあった。
これによって、スティーブン・キングは数千万円の利益を得たと言われている。
電子書籍は紙に比べて、短期間で発行できること、低コストで開発できるなどのメリ
ットがある。
●USでのパートナー
コンテンツプロバイダーや保存メディアの会社である。
●電子書籍の意義
電子書籍には、次の4つの意義がある。
・在庫、倉庫の削減
廃刊、バックナンバーもデジタルでマスターを保存できるので、紙に比べて在庫、倉
庫を削減できる。
・最低経費、最短時間で出版
紙の書籍を発行すると、かなりの費用が発生する。電子書籍の場合、紙に比べて短期
間でかつ低コストで開発できる。これによって、新人作家などの活躍、発掘の機会が
増える。
・顧客のニーズに合わせたばら売り
顧客のニーズに合わせた販売が可能である。在庫、在庫切れなどがない。
・電子としての付加価値
デジタルのメリットを活かし、音声、動画などの付加価値を付けたり、検索機能を使
用したりできる。
●アドビの電子書籍ソリューション
アドビシステムズでは、電子書籍のソリューションとして、次の製品を提供している。
・データフォーマットとして Adobe PDF
・読むソフトとして Acrobat Reader
・著作権の保護のために PDF Merchant
●著作権保護に有効なPDF Merchant
1999年3月から米国でAdobe PDF Merchantの契約が開始された。PDF Merchantは著作
権を保護するためのサーバー上で動作するソフトウェア開発キットである。主な機能
は「PDFファイルの暗号化」と「ライセンス鍵の発行」である。
・PDFファイルの暗号化
RSA社RC4 128ビットアルゴリズムを使用している。
・ライセンス鍵の発行
電子書籍購入者のPCの環境情報を含んだ鍵を発行する。印刷、図、テキストの抽出
などの許諾をコンテンツごとに設定できる。
●Acrobat Reader with Web Buyプラグイン
Acrobat 4.05用のプラグイン。Acrobat Business Toolsでも使用できる。
●販売/購入のしくみ
・PDFファイルの暗号化
PDF MerchantでPDFファイルを暗号化する。この暗号化されたPDFファイルをCD-ROM(
雑誌など)に添付したり、販売サイトに掲載したりできる。
・ライセンス鍵の発行(販売者サイトのコンテンツへアクセスする場合)
1.電子書籍の購入者は、PCから販売者のサイトにアクセスする。
このとき、購入者のPC情報が販売者に送信される。
2.販売者はe-mailなどを使用して、購入者にライセンス鍵を発行(配送)する。
このライセンス鍵は、購入者のPCだけに有効である。
3.購入者は、ライセンス鍵を使用して販売者サイトの電子書籍が参照できるように
なる。
・ライセンス鍵の発行(ロックされているCD-ROMコンテンツなどにアクセスする場合)
1.PCから販売者のサイトにアクセスする。
このとき、購入者のPC情報が販売者に送信される。
2.販売者はe-mailなどを使用して、購入者にライセンス鍵を発行(配送)する。
このライセンス鍵は、購入者のPCだけに有効である。
3.購入者は、このライセンス鍵を使用してCD-ROMコンテンツが参照できるようにな
る。
●暗号化されたPDFとライセンス鍵
暗号化されたPDFとライセンス鍵がセットでないと参照可能とならない。
下記の場合は、参照不可となる。
・ライセンス鍵がない場合
・ライセンス鍵があっても、環境が違う場合
ライセンス鍵には、「改ざんの可否」、「印刷の可否」などの情報を埋め込むことが
できる。
■産地直送の小説配信サイト e-NOVELSの現状
●e-NOVELSとは?
・小説をPDF化し、WWW上で公開・販売している。
・プロのミステリー小説家が中心となって運営されている。
●e-NOVELS設立の経緯
・1999年11月にWebサイト開設
・小説家 井上夢人氏が個人サイトとしてスタート。後に笠井潔氏、我孫子武丸氏も
参加。
●e-NOVELSのシステム
・So-netサーバーを利用
・作家は、原稿執筆
→電子書籍はPDF化後、WWWに掲載
→週間アスキー連載小説は、週間アスキー経由でWWWに掲載
・各出版社は単行本化
●これまでの展開
・1999年11月アスキーにサイト運営代行を依頼
・1999年12月有料コンテンツの配信開始
・2000年 5月クレジット決済開始
・2000年 5月法人化
・現在、参加表明作家20名
●現在の状況
・アクセス数 平均15万ヒット/日(平日)、90万ヒット/週
・週1回の更新
・週間アスキー、アスキー・ネットJ連動の連載をWWW上で先行アップロード
(我孫子武丸「狩人は都を駆ける」、加納朋子「スペース」など)
・週間アスキーを1年間買うと\300×12回、e-NOVELSは\360。
・現在、作品数は約70本
・ファイル容量は1Mバイト〜3Mバイト/作品。
・価格はファイル容量に比例し、\100〜\300程度。
●PDFを採用した理由
・著作権の保護(電子署名を残せる、改ざんが困難)
・表現上のアドバンテージ(フォントの埋め込みが可能、可読性、リーダーの普遍性)
例えば、京極夏彦氏の作品は必ず各ページ終わりは、「。」(句点)で終わってい
る。
活字化された書籍自身が作品である。フォントの埋め込み、改ざん防止は重要。
・PDF化作業の簡便性(作家自身によるPDF化も可能)
●今後の課題と問題点
・作品数の豊富化
PDF化コストをどのようにして捻出するか?
・運営コストの軽減化
効率的なDBシステムの導入検討
・ダウンロード販売の限界
読者側が3Mバイトのファイルをダウンロードするのは、かなりの負担。
●e-NOVELSの方向性
・PDF Merchantの導入(CD-ROMよるコンテンツの配布)
・メニューの豊富化(外部とのアライアンス、作品の2次利用など)
■日経BP社記事検索・購入システム
●システム概要
・日経BP社が発行する26誌の記事をインターネットで購入できるシステム。
・該当記事の検索が容易である。エキスパート、雑誌月号検索から選択可。
・ファイル形式は、HTML及びPDF(PDFはカットアンドペースト不可)
・決済はカード及びオリコによる回収代行、定額契約(法人)、ISPによる代行。
●MEDOC
・誌面イメージのPDFデータによるデータベース。
・Quarkで製版データを作成する際に、専用のエクステンションで必要な書誌データを
記事単位で埋め込む。
・切り出したテキストに書誌データを付加したものをデータベース化。
・記事は該当するPDFとn対1
・当初は、雑誌のバックナンバーを電子的に保存することを目的として構築。
テレコン21を通して先行公開。
●システム構築の前提
・課金には、既存のcommerceサーバを使用。
これによって、ID、パスワードの安全な運用が可能。暗号方法はMD5。
・定期購読者には割引を実施。購読者管理システムと連携して実現。
・アクセス制御プロキシを採用し、不法アクセスを防御。
・誤った記事に対しては、緊急停止機能で対処。
●今後のサービス展開
・検索結果表示の改善として、サマリーシステムを導入予定。
・販売ネットワークの拡充
→ISPとの提携、社内イントラとてし、DB、システムごとを提供。
・データダウンロードサービスの展開
「PC関連購買データ」や「インターネット視聴率データ」は実装済み。
■質疑応答
質問(白旗さん):今後、紙とPDFは共存していくのか?あるいは、どちらか一方だ
けが生き残っていくのか?
回答(三栖さん):日経BP社では、PDFによるバックナンバー販売をしているが、
紙メディアに対する影響はでていない。
回答(福岡さん):紙メディアに対して悪影響を与えているということはない。PDF
による電子書籍の技術は、「新人作家発掘の場」、「手軽に作品投稿ができる場」を
提供している。
質問(三栖さん):紙メディアで可能な「回し読み」ができるようにして欲しい。
回答(石原さん):将来は、ライセンス鍵を別のPCへ移動して、電子書籍でも「回
し読み」ができるようにしたい。
質問(三栖さん):モバイルなどを使って、電車の中で手軽に読むことができるよう
にならないか?
回答(石原さん):英語版では、Windows CEで参照可能である。
パームOSでも参照できるように検討中である。
まず、英語版で実現し、その後日本語版でサポートするようになるであろう。ビジネ
スショウでデモを実施した。詳細は、「日経トレンディ 8月号」を参照して頂きた
い。
質問(聴講者):ユーザーは、紙メディアで読む割合が多いのか?あるいは、画面上
で読む割合が多いのか?
回答(福岡さん):約8割は画面で読んでいる。ただし、既に紙メディアで読むこと
ができるものについては、ユーザーはあえて電子書籍をダウンロードして画面で読む
ようなことはしない。新刊本の中には、ユーザーの手元に届かないで処分されるもの
もかなりある。この現状を考えると、電子書籍の場合、このような新刊本も参照可能
となる。
|