Conference レビュー

7月29日(木)
【Keynote Sessions for Professional Publishing】
第三部 広告、出版ビジネス におけるPDFの利用
記録担当:高橋 尚子 ナウハウス株式会社

■広告業界におけるPDFの利用(三島 英人氏)

●PDF利用の歴史
PDFは、日本語版のないVer2.0の時代から、海外の代理店とのデータ交換に利用してきた。国内での利用は、Ver3.0の日本語版が発売されてからである。
  
●広告を取り巻く環境の変化・・・デジタル化、多様化、ネットワーク化
なぜ、PDFを利用してきたかというと、このデジタル化、ネットワーク化時代において、広告を取り巻くさまざまな環境やクライアントの要求が変化してきたことにある。
まず、800名にも及ぶクリエイティブスタッフが全員コンピュータ(Macintosh)を利用し、ネットワークで相互に接続、電子メールを介して、営業やクライアントとデータのやりとりをしているため、データを軽くする必要である。また、限られた予算内で、より多くのメディアに広告を掲載するクライアントが増えている。特に、Webサーバーへの掲載は、1クリックいくらという形で非常にシビアに計算されるため、利用も多いが評価は厳しい。広告のサイクルも短くなっているため、データの効率化が求められている。
 さらに、広告はマス広告から、個人にきめ細かく、深く情報を提供する形式に移行してきている。かつてのダイレクトマーケティングは、バナー広告とWebサーバー、電子メールとWebサーバー、ラジオとWebサーバー、といったような組み合わせで、ピンポイント広告となっている。個人向けに修正が可能なデータが求められる。 環境問題としてもユーザーの目、クライアントの要求がある。無駄な紙の利用を減らすため、広告、マニュアルなどがどんどんオンデマンド形式になっている。必要な部分だけプリンタで印刷すればいいと考え、すべてDTPで行われている。もちろん、ここでもデータの正確さと効率化が必要となる。ついでに、輸送費、倉庫代など もコストダウンできている。
ネットワーク化も、制作を変えた。デザイナーなど外部の制作者を都心だけでなく、地方にも求めることができ、時間や距離に制約されずにやりとりができる。また、時差をうまく利用すると、日本→中近東→ヨーロッパ→米国→日本と24時間、世界を使って作業ができるため、時間を稼ぐことができる。データのやりとりには、軽いPDFがよい。
また、広告の入稿サイクルを短くすることができる。新聞であれば4日前、雑誌ならば1週間前であったものを、新聞で前日入稿というのを実現した。たとえば、気象庁が発表する花粉情報を元に空気清浄器の広告、オリンピックなどスポーツの結果を取り込んだ広告などが制作できた。この場合も、崩れない完全なフォーマットが必要になる。
  
●PDFを利用したワークフロー・・・これからの広告の考え方
これからは、広告の素材(テキスト、画像、映像、音声)をバラバラに管理し、それらを素材管理のデータベースのようなものに蓄積し、その都度必要な形態に加工し、ジェネレートするようになるだろう。ジェネレートされるものは、CD-ROM、Webサーバー、印刷物、放送コンテンツなどさまざまである。ジェネレートが自動化できればよいが、それはオールマイティにできないし、そこにはデザイン要素を加味したい。このデータベースにPDFは最適である。
また、現在の利用において、校正やフォーマットの確認にPDFがいちばんである。出力プリンタに依存しないで、フォントも含めた表現の確認ができることがよい。さらに、文書フォーマットが崩れないので、社内での文書管理やプレゼンテーションにもPDFを利用している。PDFならば、Web上で縦書きを作成しても、ブラウザのフォントに依存しないで表現ができる。本日のプレゼンテーションも、PDFで作成したものである。このように社内利用が多い。
社内利用が多く、社外に利用できないのは、クライアントに対しては、PDFを並べただけでは、手抜きをしたように見られるからである。クライアントの要求を取り入れていくと、CGIやJAVAなど複雑なことをしなくてはいけなくなるからである。
PDF で簡単に作成したものは、クライアントには、まだ理解されていない。
  
●結果・・・PDFは入れ物である
今のところ、PDFはあくまでも入れ物であり、フォーマットである。したがって、これをハンドリングするソフトウェアや仕組みが必要になってくる。ここにビジネスチャンスがあると考える。先ほど説明した、素材のデータベースをハンドリングす るようなソフトウェアもその一つである。
まだ事例が少ない。これまでのDTPデータなどを活かして、いろいろなものが作成できるのではないか。さらに、アナログデータをデジタル化したり、印刷物を他のメディアにするなど、メディア変換にも利用できるだろうと考えている。
  
■日経BP社の雑誌データベース(田平和彦氏)
  
●MEDOCシステム
日経BP社が出版している雑誌・別冊の内容(写真や図版も含めて)を、何とかデータベース化できなかということを検討し、システム開発を96年5月にスタートした。その開発コードネームが、MEDOC(Magazine Editing and Database Of Color-print System)である。ちなみに、MEDOCは赤ワインの名前である。なお、現在、配布されている雑誌CD-ROMは、単なる雑誌記事のPDF化ではない。CD-ROM=PDFと考える人が多いが、実は簡単にPDF化できない問題点があり、それをまとめて紹介する。

●システム構築の基本的な考え方
まず、システム構築をするにあたって考えたこと、それは、編集・制作方式を一気に変更しないことである。雑誌の工程は、記事・写真・図表などを編集し、制作、印刷・製本、出版されるという流れができており、完全にDTP化されている。したがって、データベース化すれば、記事・写真・図表をデータベースに入れ、それを元に編集するのが理想的と思われた。しかし、データベースを作成するために、編集 を行っているわけではないので、編集に余計な作業が発生することは許されない。つまり、記事のデータベースを作成するにあたって、これまでの編集・制作工程を 変更しないで行なわなくてはいけない。制作工程を合理化するのではなくて、制作 物をデータベース化することになる。
なぜデータベース化するかというと、創刊当時の雑誌の紙がボロボロになってきたので、その記念品としての保存。これは、現物でないと意味がないという話しもある。また、社内には35誌、総ページは130万ページにも及ぶ情報があるため、これを資料として記事内容の再利用ができないかということ。しかし、1ページ100円でデータベース化を行ったとすると、1億3千万円にもなる。さらに、記事の中には使用 権などがあって、さかのぼって調査するのも難しい。使えない記事までも単にデータベース化してもしかたがない。したがって、費用をかけずに、長期にサポートされるもの、維持に手間と費用がかからないものにしなくてはいけない。また、月刊誌とは言え、実際の作業は数日で行われているので、簡単にできるようにPDFでの保 存を検討した。
  
●システム開発の条件
MEDOCシステムの開発をするにあたっての条件は、
1 記事に、図表が非常に多い。これらを読み取れるようにデータベース化しなくてはいけない。また、カラーはカラーのままデータベース化する。
2 市販のソフトウェアをできるだけ利用する。現在利用しているQuark XPressのFileから、簡単に確実に切り出せるようにする。
3 記事の再利用においては、使用権の問題があるため、PDF化するときには、各記事に使用権を入れ、使用権のない記事や写真などは、置き換えなくてはいけない。 この作業を各クライアント(記者のPC)で行ってもらうのに、特別な設定やソフトウェアは使用しない。
ということで、取り組んだ。しかし、単純なPDF化だけでは収まらなかった。
1では、実際に72dpiと144dpiで作成したPDFファイルの誌面の比較を行った。72dpi では、拡大しても写真はモザイクがかかったままになる。グラフなどは、正確に表示されないと意味がなくなるので、個別に解像度を上げなくてはいけない。
2では、DTPソフトウェアとPDFとの相性が問題となった。毎日、安定的に作成しなくてはいけないので、自動化、大規模処理に対応する必要がある。しかし、多くがフォントの問題で、スミ文字のフォントが薄くなる、誌面に帯が入る、網かけが外れる、英字が表示されない、凝った絵を使うとダメになる、といったことが起った。 実際には、まだ、商用に絶えられるところまできていないという感想である。
3の例は、実際に誌面に使用権のない写真や記事があった場合は、そのままPDFファイルにすることができず、写真の部分を×印の図に置き換えて、ページを作成し直さなくてはいけない。写真だけでなく、コメントなどの記事でもそのようなことがある。つまり、誌面をそのままPDF化できない。
  
●技術的な課題と残された課題
社内での考え方が分かれている。「雑誌は読み捨てるもの」という考え方では、PDF化し 「雑誌は読み捨てるもの」という考え方では、PDF化して残すことに協力的でない職人気質の人もいる。この人達は、結果として雑誌ができればいいと思っているところがある。さらに、記事の修正が発生したときに、デジタル化されているので簡単にできるだろうと思われているが、PDFでは元の記事のテキストを修正するところまでいかないといけないので、簡単ではない。
また、社内の記者は、すべての記事データベースを参照、再利用できるが、外部に公開する記事は、オンライン使用権のあるものだけとするため、データベースを切り分けた。また、表紙はgifファイルでイメージを残し、表はcsv形式で再利用可能 に、誌面はそのままのレイアウトで残していくとした。ここで、もう一つ検索エン ジンの機能も問題になる。まもなく、社内、社外での切り分けを自動的に行えるよ うなものができる予定である。
また、現在の雑誌のCD-ROMでは、広告が入っていない。広告も記事の一つと考えられているので、使用権や有効期限などを考えて入れられれば、読者にとって有効になるだろう。
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